『貧乏物語』巻頭引用辞

現代語訳

Eine fruchtbare Behandlung der sozialen Frage wird nur demjenigen gelingen, der sie mit der Erkenntnis der Unlösbarkeit des Problems beginnt.
Heinrich v. sybel. 1895

問題の解決不可能性の認識をもって始める者のみが、社会的問題に実り多い仕方で対処することに成功するであろう。
ハインリヒ・v・ジーベル※1、1895年

The tremendous labour question remains absolutely untouched — the question whether the toil of a life is not to provide a sufficiency※3 of bread. No thoughtful man can for a moment suppose that this question can be put aside. No man with a head and heart can suppose that any considerable class of a nation will submit for ever to toil incessantly for bare necessaries — without comfort, ease, or luxury, now — without prospect for their children, and without a hope for their own old age.
Harriet Martineau, 1878.

途方もない労働問題が、全く手つかずのまま放置されている。すなわちいくら汗水流しても、十分なパンにありつけないという問題だ。物思う人ならこの問題を、一時たりとも放置はできないだろう。頭と心を持つ人なら、これほどまで多数の国民が、ただ最低限の生活必需品を得るため、絶え間ない労苦に、好きこのんで永遠に縛り付けられているのだと思えはしない。その労苦たるや、快適さや安らぎ、つまりは余裕なしであり、それゆえ子供の将来にも、自分の老後にも希望が持てないでいるのだ。
ハリエット・マーティノー※2、1878年

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訳注

原文は、ドイツ語および英語だけで記されており、日本語訳は原文に無し。
※1)ハインリヒ・v・ジーベル:こちらの人物と思われる。

※2)ハリエット・マーティノー:こちらの人物と思えるが、没年が1876だから、時間が合わない。誤植か、もしくは死後の出版からの引用か。
これにつきネット上の情報を追っていくと、出典は A History of the Thirty Years’ Peace, A.D. 1816-1846 だと判明した。この書籍をInternet Archive: Digital Library of Free Books, Movies, Music & Wayback Machineサイトで探せば、出版年が1877とある。
河上先生は、別の版本をお読みになったのかも知れない。

※3)sufficiency:弘文堂版ではsufficieneyとある。なお訳者はドイツ語を全く知らないので、ITの力を借り可能な限り自力で解釈した上で、若き友人Fくんのご教示を仰いだ。Fくん、ありがとう。

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